日の出から多摩へ(141)-人は森と話せても コンクリートとは話せない-

安保法案は、衆院に続き、参院特別委員会でも強行可決された。やはり、安倍首相には抗議の声は届かなかった。だが、作家の高橋源一郎が次のように述べていて、焦らず諦めずと思うのだ。

「現政権には特定秘密保護法から憲法改正に至るストーリーがあります。だから安保関連法が成立しても終わりではありません。憲法違反の法なのだから違憲訴訟も起きるでしょう。やることはいっぱいある。「おかしい」と思ったら粛々と声を上げていく。それこそが民主主義です」(2015・9・Ⅰ8付『東京新聞』)。

と、今度は、ユニークなニュースが、日の出弁護団の樋渡俊一弁護士から届いて、思わず拍手喝采。それは「新潟県弁護士会会長のコメントが世間を賑わしています。この会長は、弁護団の平哲也弁護士です」とある。平会長がウェブサイトに公表した「安全保障関連法案の強行採決についての会長コメント」とは、

「おかしいだろ、これ。」

この一行のコメントが、大きな文字で書かれていたのだ。私も見ました。迫力がありました。平会長、あっぱれ!振り返れば、「おかしいだろ、これ」が、日の出運動・裁判にもたくさんあった。

例えば、当時の処分組合は、谷戸沢処分場の汚水漏れを証明する、処分場の水質データ開示を拒否し、呆れた地裁は、とうとう一日一五万円の間接強制金支払いを命じ、途中から三〇万円になっても払い続けた。その後、請求する五項目データのうち四項目を開示、重要な電気電導度データはない、と主張。ところがその後「実は存在している」と言い出して…「おかしいだろ、これ」。

さて、前回、作家のドリアン助川のことに触れたが、それは彼の小説『あん』に関係する。あらすじは、どら焼き店の店長が七〇歳過ぎの女性を雇う。手が不自由ながら彼女の作る餡(あん)が評判になるが、彼女がハンセン病患者だとうわさが広がり、客足が減っていく、というもの。そして、今年五月、この本を原作とした映画『あん』(河瀬直美監督)が上映された。映画のほとんどを東村山市で撮影し、市内のハンセン病療養所「多摩全生園」も舞台になった。

撮影終了後、監督や出演者が地元の人たちに感謝する席で取材に応じた主演女優の樹木希林が、「七〇過ぎまで生きてきて全生園のことを知らず、恥ずかしかった。園で暮らす人に『あんた、がんばんなさいよ』と言われて元気になったと話した」(2015・5・31付『朝日』)という。

樹木希林という人はなんと全うな人だろう。さらに全うさを裏付ける文を読んだ。『ウクライナで思った「平和主義」』という投稿文(2015・8・7付『朝日』)で投稿者はドリアン助川。

内容は、ウクライナの国際映画祭に『あん』が招待された。紛争地なので周りは反対したが、樹木希林が言った。「そんな状況だからこそ行ってあげたいのよ」。

二人は出発し、大変な歓迎を受け、映画も評判が良かった。彼は、「積極的平和主義というものが本当なら、大国の軍事になびく政治より、文化交流こそこの国の基本姿勢であって欲しい」と結んでいた。女優の心の優しさに感激した。

と、一〇月、田島征三さんから郵便物が届いた。まさかのシンクロニシティ…この項続く。

(宮入容子)

<ゴミから変えよう・環々学々の会発行『けせらん・ぱさらん』第131号 2015年10月30日より転載>

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