大気汚染のメカニズム

焼却灰による大気汚染のメカニズム

谷底に埋め立てられるゴミが周辺大気汚染を引き起こすことを私たちは全く予想しなかった。しかしゴミの多くはスギ花粉よりも小さな焼却灰でひとたび舞い上がると周辺の気流に流されて運ばれていくことが判った。処分場から出てしまった灰が周辺のさまざまな気流でいくつかのパターンの大気汚染を起こす。

焼却灰の大きさと大気中での動き

毎年春になると私たちを悩ませる杉花粉は発生源よりも遠く離れた所にいても風によって舞ってきた花粉によって目のかゆみ、鼻水、くしゃみ等の症状をあらわします。
焼却灰は花粉よりも小さいので、より飛散(浮遊)しやすい粒子です。これらを吸い込んでも、花粉のようにすぐに症状は出ませんが、灰の中にはダイオキシンをはじめ危険な物質が含まれているため、長い時間をかけてアレルギー・免疫力の減退・男子出生の減少・癌死等の症状となってあらわれます。

灰の多くは10ミクロン以下です。

一般廃棄物の焼却灰やばいじん煤塵等は粒径10ミクロン以下が重量で40%を占めます。すなわち、個数的には10ミクロン以下が圧倒的に多いことになります。

鉱工業における各種ダストの粒径分布(ロジン・ラムラー線図)
鉱工業における各種ダストの粒径分布
ごみ焼却炉から出る粒子は粒径が10ミクロンの場合ふるい上が60%である。これは粒径10ミクロン以上の粒子が重さ60%あることを示している。10ミクロン未満の粒子が重さで40%あることになり、その中には1ミクロンのものもあれば様々で、個数にすると逆に圧倒的に多いことが予想される。

灰のような微粒子は大気に乗って浮遊します。

風による粒子の運動は、以下の三つの形のいずれかになります(バグノルド・英国)。

転動:
地表を転がり動く。
跳躍:
地表から飛び上がり、しばらくして地表に戻りますが、そこで弾んで再び空中に舞い上がります。
浮遊:
風や転動、跳躍した粒子の衝突によって空中高く舞い上がります。その浮遊する距離は粒子の大きさによります。

風による粒子の動き(K.Pye,1987 : Aeolian Dust and Dust Deposits,Academic Presss,P49より)
風による粒子の動き
上図のように20ミクロンより小さい粒子は、風に乗って長い浮遊を始めます。すなわち、焼却施設から持ち込まれた焼却灰等のかなりの部分は、風によって浮遊を始め、処分場外に汚染物質を運ぶことになります。なお、粒径20ミクロン以下の粒子は通常目視できません。私たちがが浮遊状態を目視できる粒子は、杉花粉のように30ミクロン以上の粒子で、そのような大きな粒子でも空中に浮遊して容易には地上に降下しないことはご存知のことと思います。

焼却灰はわずかな風で舞い上がります。

風速数10センチで灰は舞いあがります。したがって私たちが感ずることが出来ない微風(風速1メートル)が吹けば大部分の灰は舞いあがり長い浮遊を始めることになります。

粒子の直径と飛散臨界風速の関係

平坦で乾燥した地表面から微粒子が飛散するときの臨界摩擦速度、地表面上高度1mの臨界風速、および静止空気中における微粒子の落下速度(自由落下速度)zo=0.0001mとする。なお、臨界摩擦速度は粒子の密度の3/5乗に、直径の4/5乗に比例する。摩擦速度は乱流の強さを表すパラメータであり、地表面に近い層の乱流の鉛直成分は概略、摩擦速度に等しい。また、摩擦速度は近似的に、地表面上に並ぶ祖度物体(砂粒など)の上端高度における風速に等しく、この風圧で祖度物体を転がすことになる。(「地表面に近い大気」近藤純正著、8章Q&A8.1参照)

粒子の直径 臨界摩擦速度 高度1mの風速 自由落下速度
0.002mm 2μm 0.009m/s 0.20m/s 0.0003m/s
0.003mm 3μm 0.012 m/s 0.28 m/s 0.0007 m/s
0.005mm 5μm 0.018 m/s 0.42 m/s 0.002 m/s
0.01mm 10μm 0.032 m/s 0.73 m/s 0.008 m/s
0.02mm 20μm 0.055 m/s 1.3 m/s 0.031 m/s
0.03mm 30μm 0.076 m/s 1.8 m/s 0.07 m/s
0.05mm 50μm 0.12 m/s 2.6 m/s 0.2 m/s
0.1mm 100μm 0.20 m/s 4.6 m/s 0.7 m/s

風洞による微風下での微粒子の浮遊の様子

 風洞による微風下での微粒子の浮遊の様子
わずか風速20cm/s 用いた粉体はアルミナ

杉花粉、焼却灰,粉体、周辺の焼却灰 の電子顕微鏡 写真

杉花粉
杉花粉
町田市焼却灰
町田市焼却灰
アルミナ
アルミナ
立石観測点で捉えた微粒子
立石観測点で捉えた微粒子

風による場外飛散のメカニズム

灰の飛散が避けられない埋立て作業

処分場での作業

次のような作業手順で灰の処理が行われるため灰の飛散はさけらません。

  1. 運び込まれた不燃ごみと焼却残渣(灰)は運搬車よりダンプされます。
  2. ダンプされた灰はブルドーザーによって埋立位置に運ばれます。
  3. 1日分の灰は一定の場所にかためておかなければならないので何度も敷ならし・転圧という作業が行われます。

 以上のように毒物を含んだ大量の灰が,自然地形を利用した巨大処分場に毎日毎日運びこまれています。灰と同じように粒子が細かく,毒性のあるアスベストは厳重な管理のもとにその作業が許可されています。また同じ焼却灰においても大阪能勢町の焼却炉解体作業もほとんどアスベストと同じ作業手順で行われ,それでも作業員は多量のダイオキシンに汚染された例があります。そして焼却灰を原料とするエコセメント事業においては同じ焼却灰を扱うのに輸送時から密閉管理を行っています。しかし処分場での灰の管理はどうでしょうか。作業手順で示したように大変ずさんな管理であるため焼却灰は開場から現在に至るまで場外に飛散続けてきました。

廃棄物処分場指針に基づく作業よる灰の飛散

 廃棄物処分場指針に基づく作業よる灰の飛散

焼却残渣積み下ろし時の灰の飛散状況

焼却残渣積み下ろし時の灰の飛散状況

敷き均し時の灰の飛散状況

敷き均し時の灰の飛散状況

猛毒な発ガン物質ダイオキシン類などを含んだ焼却灰が全国3441箇所以上の処分場で日々このような危険な作業が旧厚生省の指針によっておこなわれています。

焼却灰には危険な物質が含まれていることから本来これを取り扱うときは細心の注意が要求されてきている。同じく発がん性物質のアスベスト並みの飛散、吸入を避けるために以下のようなことが法律で義務付けられている。

熱による気流・地形による気流

熱対流混合風

数日晴天が続き地表面が乾燥している状態で、すり鉢状の地形に強い日射が加わると、埋め立て面は急速に温まり、処分場内に強い上昇流が起こり、上空の冷気との間に激しい対流が起こります。これにより高く舞い上げられた灰は一般風に乗り遠く拡散します。

熱対流混合風

斜面上昇流

晴天の日中は斜面は急激に熱くなります。この付近で熱せられて軽くなった空気は斜面に沿って上昇します。これを「斜面上昇流」(あるいは谷風)といいます。

斜面上昇流
斜面上昇流修正あり

立石小麦粉シミュレーション

立石小麦粉シミュレーション

ヒートアイランド現象による上昇流(局地的低気圧)

谷をせき止めて植物を完全に取り除き造られた処分場は,以前の環境とは大いに変わっている。植物が空気を冷やす効果は失われ、日差しにさらされると熱せられたおなべが緑地の中に埋め込まれたようです。暖められた空気は処分場内を時計と反対方向に渦を巻きながら上昇します。これは都会に見られるヒートアイランド現象に似て局地的に発生した小さな低気圧と考えられます。

ヒートアイランド現象による上昇流(局地的低気圧)

類似地形によるシミュレーション

調査

調査

処分場内を飛散するビニール片

 処分場内を飛散するビニール片
このような現象は処分場内を飛散するビニール片や処分場類似地形によるシミュレーションでも確かめられました。

地形による気流

すり鉢状の地形の上空に一般風が流れると、風上にある灰を含んだ空気は風上の斜面に沿って引っ張りあげられ、上空の一般風に合流します。
このことは
・ ホームに電車がは行ってきたときに引き寄せられる。
・ 高速道路で小さな車が大型の貨物車に追いぬかれるとき大型車の方に軽い小さな車が引き寄せられるのとおなじ原理です。
地形による気流


急峻な山(斜面の角度が17度以上)に風の流れが近づくと山の斜面に対する風当たりが強くなるので、大部分の風は上の方に(圧力の低い方に)逃げるように持ち上げられ、すなわち頂上付近に風が集まって強い風が山を超えていきます。二ツ塚処分場も斜面の角度が17度を超えているのでこのようなことが起こり、処分場の中の気流が外に押し出されていきます。

つぎのことを思い浮かべてください→
川の中に沈んでいる石っころの上を水が流れるときそこだけ急に早くジャンプするような光景。
急峻な山


すり鉢状の地形では上空を季節風などの一般風が吹くと、すり鉢状の底の空気が吸い上げられて外に流れ出されます。
このことは→
「霧吹き器」から霧がでる原理によくているので「霧吹き現象」と呼ばれることもあります。
すり鉢状の地形


迂回する風
風が山に向かって吹くとき山の左側を迂回するような流れかたをします。
迂回する風


吹き抜けやすいところに吹き込む
1.障害物を避けて流れます。
2.閉塞された谷間のような地形から開けたところへ集中して吹き出すことがあります。
吹き抜けやすいところに吹き込む

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