これからのごみ問題(市民環境問題講演会 報告)

たまあじさいの会の発足当時から行われている「市民環境問題講演会」は会を重ね33回になりました。今回の講演会は「日の出の森・支える会」・「日の出の森・水・命の会」の共催で、4月7日羽村市生涯学習センターゆとろぎ小ホールで開催されました。来場された方は61人、3分の2以上の方が日の出の運動に何らかの形でかかわった懐かしい顔の人たちでした。今回の講演をお願いした気鋭の二人は、小学校のころ処分場建設反対運動を身近に見たり体験しています。あれから25年近くたった現在、それぞれが活躍する分野での活動の内容と、ごみ問題をどのように捉えどのような方法で解決を考えているかについて語っていただきました。

これからのごみ問題

1部 基調講演 中里唯馬さん

中里唯馬さんのプロフィール

・1985年生まれ、小学校のころ父に連れられ二ツ塚処分場予定地にあっ たトラスト地をたびたび訪れる。
・2008年ベルギー・アントワープ王立アカデミーを卒業。・2009年 「YUIMA・NAKAZATO」を設立。
・2016年からパリ・オートクチュール・コレクションに公式ゲスト・デザイナーとして参加している。日本人公式参加は森英恵さん以来2人目。

「ファッションの未来を考える」

衣服の世界が環境に与える負荷は、原料の生産過程から大量生産・廃棄まで考えるとモビリティーに次いで2番目に大きいと言われている。、ファッションに関わる者としこの問題に対して何かできることはないかと考えていると話された。それから自分が大量生産の対極にあるオートクチュール(デザイン・素材・縫製 など最高品質を求めて作一点もの)の世界を選んだ理由を語った。
ゼロウェイストな世界をデザインするというテーマで話されたことは 世界で作られた服の75%が廃棄されていること、作る側の立場として衣服の終わりを見るためにケニアの世界最大のごみ捨て場に行き、圧倒的なごみの量と周辺の環境汚染の実態に驚く。そして絶望の話から希望の話へと話は変わり二つの話をする。一つはケニアから持ち帰った古着150キロをドライファイバーテクノロジーという古紙を再生する技術で不織布にリサイクルし、その持ち味を生かした新しいファッションの制作と、もう一つは人工タンパク質という素材の糸を使って作った布で、その特性を生かした無駄のない一枚の布で作るファッションをパリコレで発表したこと。これらを映像を使って話された。
砂漠から価値を生み出す ケニアではもう一つの旅があった、不毛の地帯を見て歩く機会を得てそこで人類の服飾の意味を見出したこと、そこで拾った石から染料を作り、それで染めた布を用いてデザインしたことを語った。
共に未来を創るというタイトルで話されたことは「ファッションフロンティアプログラム」という教育とコンテストを組み合わせた場を作り、毎年8名を選び無償で機会を与え、新しいクリエーターを育てている。そこでは既成的な概念を覆すものや、社会的なメッセージを発信してゆく試みが生まれているとのこと。 最後にファッションから今の世に新たなメッセージや平和や人類の未来を考えるきっかけとなる最近発表したショウの映像を示しながら講演を終えました。

第2部 次世対談 中里唯馬さん×永戸考さん

永戸考さんのプロフィール

小学校のころから両親と共に二ツ塚処分場反対運動に参加。弁護士(多摩Kollect法律事務所)
訴訟だけでは問題は解決しないと言うことに気づきアメリカのバークレイロースクールの臨床法学教育プログラムに参加、そこでバークレーと提携のあるEBCLC(地域公益法律センター)で活動する。いくつかある部門の中でCEJ地域経済正義クリニック選び問題解決の方法、弁護士のかかわり方、ロビー活動などを学ぶ。活動の根底にある方法などに日の出の運動の類似性を感じる。

対談

お互いが子供のころ日の出の運動をどのようにとらえていたかという話から対談は始まり、永戸さんは自分にとっては運動は日常的なことで、トラスト地などで見る大人が活き活きと楽しそうに見えたと語り。中里さんは何か非日常的なことが行われている感じがして、森などがなくなるのを見るにつけ何か良くないことが起きている予感がしたとのこと。
現在まで続いているごみ問題に対する考え方について 永戸さんはごみ問題は訴訟による解決には限界があると感じる。バークレイで学んだ訴訟によらない問題解決方法もあるのではないかと、一方でこの頃の社会におけるごみ問題に関する認識は、企業も行政も積極的であり、以前とは違ってきている。若い人たちも自分たちで出来ることがあるのではないかと積極的に考えていると。中里さんはトラスト時代のごみ問題に対する考え方とこの頃の社会的空気はここ30年変わってきている。社会的な大きなうねりを感じると語る。
中里さんからのごみ問題解決にあたっての課題とか障害はとの問いに対して、永戸さんは社会と法律の乖離を挙げ、廃掃法の旧弊な面が企業などの新たな試みの足かせとなっていると。中里さんはクリエーターの立場としての新しい試みに対して、法律が壁となる場合があり、それを乗り越えるため法律家とクリエーターの連携が必要になる。また法律によらず問題解決のためには人々の意識の変革や価値観を変えることの方が早いのではと話された。
中里さんはこれからの自身の方向性について、デザイナーとしてのアクションを通して意識の変革を進めることも必要だが、未来に対する普遍的な価値を生み出すためにはより強固な哲学が要求されると話された。
最後に田島征三さんから講演について感想がありました。唯馬君や考君のやろうとしていることがやがて法律を変え、他のジャンルの人と手を携えて、行政に反対がするのではなく一緒にチームを組んで世の中を変えてゆく、そういうところまで行けるのではないかという希望の時間だった。

講演会にいらした方の感想

● 大変新鮮な思いで、お話をお聞きしました。子供のころトラストの地に親に連れられて行ったお二人が素晴らしいお話をしてくださったことに感動いたしました。田島征三さんがお二人に希望をありがとうと、中西四七生さんがありがとうとおっしゃったこと、私も同じ思いです。若いお二人に希望を頂きました。ありがとうございました。こんなに感動しこんなに泣いた講演会は初めてです。 Yさん

● 日の出の運動、 裁判は負けて 強制収用 処分場も作られ エコセメント工場による健康被害 ・・・・・ くやしい思いばかりでした。 でも 今日 トラスト地でかけまわっていた二人が 「希望」の未来を語ってくれま した。うれしかった。ありがとう。 Sさん

*この講演会の詳細はたまあじさいの会のHPに掲載されます。興味をお持ちの方はご覧ください。

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