場外に飛散した焼却灰の汚染パターン

処分場から焼却灰などの汚染物質が飛散し、周辺の地域に及ぼす影響を考えてみましょう。

パターン1.日中および夜間が晴天で風が弱いとき (山谷風が吹き、逆転層が発生するとき)

日中処分場内の作業により舞い上がった焼却灰は、処分場の斜面上昇流に乗り場外に飛散する。この気流は川に達すると川を上る谷風に合流し、灰は上流に飛散する。夜間上流に飛散した灰は放射冷却により発生する川を下る冷たく重い山風によりゆっくりと下流に戻ってくる。川幅が広いところはこの流れはさらに遅くなる。そのようなところは人家が密集するところが多くそれらが風の障害物になり冷たい気流は停滞しやすい。この冷気は接地逆転層により生じた暖かい空気に閉じ込められ、翌朝日光が地表面を暖めて接地逆転層を解消するまで高濃度の汚染が継続する。

日中

処分場内で飛散した灰は、処分場の斜面に沿って200mから500mほどの厚みの気流によって上下に拡散されるので割りとうすまって場外に出ていきます。やがてそれが本流の谷筋までいくと、本流や上流側の支流の谷を登る上昇流(谷風)やそれに交差して山の斜面を登る風(斜面上昇流)に合流して周辺の山々に飛散していきます。後で風船飛ばしのところでお話しますが、谷筋を上る谷風がそれを交差する斜面上昇流より優勢なので実際には川を上る気流に沿っていきます。灰の汚染が低濃度でも処分場の埋立作業開始時刻の午前10時から覆土終了時刻の午後4時まで灰の飛散は続きます。

両側の山の斜面を登り谷の中心部に降りてくる暖められた空気を集めて谷を上る谷風

両側の山の斜面を登り谷の中心部に降りてくる 暖められた空気を集めて谷を上る谷風

夜間

日没後、地表面が急激に冷える(この現象を放射冷却という)と地表付近の空気も冷やされ重くなり斜面を下る冷気流(山風)が発生します。

昼間周辺の山々に飛散した暖かい気流に混じっていた汚染物質は、日が沈むと山が冷やされるので冷たい気流に閉じ込められて濃くなりゆっくりと下ってきます。
この冷たい気流は地上を這うように低く流れるので人間や地上生物の健康におよぼす影響が特に心配になります。

両側の山の斜面から下りてくる冷気を集めながら谷を降りる山風

両側の山の斜面から下りてくる冷気を集めながら谷を降りる山風
この場合川巾が合流などによって広がっていているようなところ(その下流がまた狭くなっているようなところ)や住宅が密集していたり樹木など空気の流れを遮るものが多いところでは冷たい空気が淀んだり空気の流れがゆくりになったりします。また窪地があればそこに溜まります。このようなところでは次の朝、日がのぼって地面が暖められて冷たい空気が上空にのぼっていく(逆転層が解消される)まで一晩中濃い汚染の中に長く閉じ込められるおそれがあります。
冷たい風
冷たい風も川の流れと同じように幅が広いところに来ると淀む
地面の凸凹
地面の凸凹度が高いほど風は通り抜けにくい

汚染にされた冷たい空気に閉じ込められているのは、季節によって異なりますが、日が沈む前後から始まり翌朝日が上って数時間は続きます。汚染の濃さは季節や風の弱さや上空の気温、空気や地面の乾燥状態、雲の量などにより異なります。

山谷風と斜面風

山谷風と斜面風

夜間の放射冷却

すべての物質は24時間熱を赤外放射し続けています。日中も地面は同じ熱量を放射していますが太陽から受ける熱がはるかに多いので差し引きでは暖まることになります。夜または日が当たらないと地面は太陽からの受ける熱がないので冷やされるということになります。水蒸気や雲があると地面からの熱放射と水蒸気や雲からの地面に向けての熱の放射が、あるところで平衡に達してそれ以上の冷却は起こりません。しかし夜間雲もなく、地面が乾燥している時はひたすら冷える一方で地面には冷たい空気が溜まり、さらに風がなければ、周りの空気からも熱をもらうことがなく放射冷却は最も激しくなり、この時強い接地逆転層が発達します。ここで接地逆転層とは、地面近くに冷たい空気が溜まり、空気の動きが少ない状態をいいます。日中は空気は上や下に自由に動き回り、地面近くよりも上に行くほど空気の厚みは減っていきます。水と同じように、空気の厚みは大気層の一番上から積み重なった重さになり、それが圧力として加わっています。これを気圧といいます。圧力が少なくなると空気中を飛び回る酸素や窒素などの物質も少なくなり、物質の活動する全体のエネルギー(これを温度と呼べば)が少なくなり温度が下がることになります。高い山に登ると涼しくなったり、酸素が少なくて呼吸が苦しくなるのは大体このようなことでしょう。したがって高いところは温度が低く、地面のほうが温度が高いことがが普通です。これとは反対に、接地逆転層のときは、地面のほうが温度が低く上に乗っている暖かい空気のほうが温度が高いとき、これを温度の逆転と呼び、地面に近いとこで起きているときを特に接地逆転層と呼びます。このとき地面近くの空気は、圧縮されていっぱい物質が詰まっていますが、地面が冷えているのでこれらの物質もそこからはほとんどエネルギーをもらえずに、かすかな動きしかしていないので、物質全体の活動エネルギーとしては少なく、したがって温度が低いということになります。

接地逆転層と汚染濃度

処分場周辺での接地逆転層発生時間帯

処分場周辺での接地逆転層発生時間帯
局地気象を調べてみると汚染が,冷えた空気のいたずらで一ヶ所にたまり,その地域では汚染が強くなることがわかりました。
それは一般に空気中の汚染の濃さは,空気の動く程度によって決まります。
たとえば空気の動きが活発になると縦や横に汚染物質のはいっている空気の部屋が広がるので汚染は薄まります。また風が吹くと汚染物質のいる部屋が広がるので汚染が薄められます。また風が強くなるとその物質が移動する距離が長くなり、大量な空気と混合して汚染濃度を低くさせます。風が弱い時は汚染域が大きい時風による希釈効果は小さくなります。極端な場合として地球全体が一様な汚染域になればもはや風による希釈効果はありません。日が沈むと地面はだんだん冷え、地面の上の空気も冷やされ、昼間汚染物質の入りこんだ暖かい空気も下に下りてきて冷やされます。そして地面の上に冷たい空気がたまり、その上に暖かい空気が乗ると冷たい空気は上から押さえられて、動けなくなり閉じ込められてしまうのです。この冷たい空気に中を接地逆転層といいます。このとき汚染物質は暖かい空気の広い部屋が冷たく小さな部屋に変わってしまったので汚染は濃くなります。
風が弱く空気の乾燥した晴天の夜間に気温の逆転が形成されると高濃度の大気汚染が発生します。

繰り返される接地逆転層による汚染の濃度と大気の拡散による汚染の広がり

繰り返される接地逆転層による汚染の濃度と大気の拡散による汚染の広がり

多摩川,平井川に沿って流れる風

処分場から飛散した灰は周辺の山や谷の複雑な地形へと流れていきます。これらの流れが川筋に出合うと川筋を流れる谷風や斜面上昇流と合流します。二ツ塚処分場周辺には、北に多摩川、西に平井川支流の北大久野川、南に谷古入り川、玉の内川が平井川に注ぎ込まれ、その南に秋川が流れています。私たちがここでいちばん気になるのは処分場から出た汚染物質が現実の生活する環境にどんな時間帯にどのような影響を及ぼしているのかです。今回の気象調査はこれらすべてに詳細なデータを集めることはできませんでした。下の図と表は多摩川沿いの青梅水源事務所と平井川沿いの都林業試験場のデータを処理したものです。両方のデータともに年間を通じてほとんどが川に沿って吹く風でした。(風配図参照)山や谷を流れる風は地面が太陽の熱で暖められたり、夜間の放熱によって冷やされたりして起きる風です。これが谷の斜面で起これば、山谷風になり、谷筋を上り下りする風になります。同時に谷を挟む両側の山の斜面でも山谷風と交差する上り下りの風が起こります。これを斜面流と呼びます。ちょっと複雑な話になってしまいましたが山谷風と斜面風の上図を見てください。さらに複雑なことにこれらの風は山に太陽が当たるかどうかで暖められたり冷やされて起きる風なので、谷筋や山の斜面がどの方角を向いているかによって、また季節により変化する太陽の上り沈みする方向とその時刻で決まります。下の表のデータは日中それぞれの川を上る風を月ごとに平均的な時間帯とその時間数を集計したものです。谷風の始まりは、両河川ともほぼ日の出後3~4時間後ですが、平井川沿いは冬の時期を除くと30分から1時間ほど多摩川沿いより早く始まります。谷風の終わりは、平井川沿いは冬を除くと日の入り後で、多摩川沿いは年の半分ぐらいが日の入り前です。谷風の吹く時間は、平井川、多摩川それぞれ年平均で9時間弱、10時間弱で冬は少なく夏至や8月に多い。これらの傾向は上で説明したような、季節や谷や山の地形などいくつかの要素によっていると思います。平井川は谷筋が浅く、測定点の都林業試験場は開けたところにあることで多摩川沿いよりも日射が早く始まり遅くまで続くことが考えられます。また夏や夏至の時期のように、1日の日射量が多いと日没後も谷筋には、暖められた空気が上空厚く大量にあることから夜の8時、10時頃まで谷風が吹くことがあるようです。山谷風の風速は、一般にいわれているように谷風が1.5~3.5m/秒ぐらいが多く、山風は0.5~2m/秒程度でした。夏の谷風は活発で冬より風速が早い傾向を示しました。山谷風は谷筋や山肌近くの温度と同じ高さの離れた空気との温度差によって発生するので、日射によって温度が上がってできる温度差 (谷風発生)のほうが地面が冷えることでの温度差(山風発生)よりも大きいために谷風のほうが風速が早く強い風になります。山風は汚染物質を濃縮して吹いてくるので私たちの環境には最も恐ろしい風といえると思います。しかし風速が0.何m/秒台~1.何m/秒台程度の微風なのでほとんど風を感じることができません。ゆっくり動くのと谷風が吹かないときの多くは山風が吹くのでなかなか濃縮された汚染が立ち去ってくれません。

多摩川・平井川における谷風の吹く時間帯(1999年8月~2000年7月)

多摩川・平井川における谷風の吹く時間帯

日の出日の入りの時刻

日の出日の入りの時刻

多摩川、平井川を流れる山谷風の風速(1999年8月~2000年7月)

多摩川、平井川を流れる山谷風の風速

パターン2.広域汚染1 日差しが強い日(焼却灰の広域汚染)

日差しの強い日(焼却灰の広域汚染)

これはすでにお話しました熱によって起こる気流で、熱対流混合風や局地的低気圧のような混合気流や上昇気流が発生る場合です。上空まで巻き上げられた気流の中の灰は一般風に合流して遠くまで運ばれます。
このようなことが起こりそうな日を日射量を調べて予測しました。近藤純正先生の計算によりますと上空1kmの空気を5度暖めるには6.48MJ/立方mの熱量が必要です。この熱量を日射から受けると処分場の熱反射率を50%(実際にはもっと高いけど余裕を見たとして)13MJ/立方mの日射が必要になります。処分場から南南西1kmのところにある。東京都林業試験所気象計測のデータによりますと年間(1999年8月から2000年7月)日射量が13MJ/立方mを超える日は下の表のようになりました。

日射量が13MJ/立方mを超える日

日射量が13MJ/立方mを超える日
しかしこの設定はまず上昇流の高さを1kmとかなり高くしてあります。500mでも一般風に十分乗れます。(処分場北東角にある東京都防災無線の気象データは処分場より400m上にあるがデータを見ると気圧配置による風の動きが読み取れるので一般風を捕らえていることがわかります。)
また処分場の底は裸地で葉の蒸散などで熱を発散する植物はないので熱の反射率は十分50%以上はあります。したがって焼却灰の広域汚染は年間これ以上あるはずです。
さて私たちはこの上空まで舞い上がった焼却灰がその後どのようなところに行くのか追跡することにしました。まず灰が処分場から舞い上がるのは処分場が灰の搬入埋め立て作業をして、1日分のゴミの塊ができて、それに土をかぶせる前までの時間帯です。午前10時から午後3時頃です。そこでこの時間帯に上空ではどのような風が吹いているか調べてみました。下の表を見てください。

処分場操業時間帯の一般風

処分場操業時間帯の一般風
多摩川と平井川の方に流れていくときを月ごとに追ってみました。春から夏にかけては多摩川方向に流れ、秋から冬にかけては平井川方向に多く流れます。ではその後はどのように流れるか私たちは風船を使って調べました。馬引沢峠という処分場の北側の沢の上から風船を飛ばすと沢筋に沿いながら多摩川のほうに向かいます。そのまま一般風に乗り入間方面に向かっていくものもありましたが、多摩川にぶつかると川筋を通り上流に向かっていくものもかなりありました。青梅の水源事務所の気象観測機は地上約10mほどの多摩川の川沿いに設置されています。そこの気象データの風向は多摩川にほぼ沿った向きで日中と夜間でその向きが入れ替わります。日中は上流に向かう早い谷風を、夜間は下流に向かうゆっくりとした山風をとらえていることが多く、時に低気圧などの影響でまったく予測のつかない風が吹いています。この傾向は平井川の川沿いにある東京都林業試験場のデータも谷風と山風の交代時間が若干違いはあるものの同じです。この風船飛ばしで分かったことは、上空を吹く風で、それぞれの川筋に吹いている谷風よりも高いところを流れると一般風の流れに従います。谷風にぶつかる程度の高さの一般風の場合は見事に直角に向きを変えて谷風に流されていきました。谷風は日中の日射量によってその高さが違うといわれています。さらに谷風に直角に山の斜面を登る上昇流も吹いているはずです。しかし斜面上昇流は一般に谷風よりも遅く弱いといわれています。風船の実験はこのことも証明してくれたと思いました。したがって日差しが強く日射量が多い日は処分場での上昇流もかなり発達して灰も高く舞い上がりますが、川の上を流れる谷風もかなり高く厚い流れになるので、灰の粒子の大きいものは重いので、一般流の低いとこを流れ谷風につかまるし、軽いものは谷風の上を超えて一般流にしたがうことになります。しかし今回の風船は地上でよやく浮く状態にして、空気の流れに従うようにして飛ばしました。沢を下ると一度沈み込みながら川に向かっていくので、谷風につかまったものがほとんどでした。一般に山を越える風は山の傾斜角が17度ぐらいまでだと峠を超える風は地表面に沿って流れる、すなわち山に沿って下降するといわれている。これより急峻だと山を越えるとき一般流に対して二次流といわれる渦ができるといわれている。これらの二次流は一般風を弱め不安定な風ができるといわれています。この場合でも峠を超えた一般風は吹きおろすのでいずれでも風は下に向かい谷風につかまりやすいことになります。この点から考えると上空に舞い上がった灰のかなりの部分が谷風に合流することになります。実際には処分場周辺は独立した山ではなく複雑な地形なのでこれらの原則をそのままは適用できませんでした。

熱対流混合風

熱対流混合風

パターン3.広域汚染2(広域循環風に合流する汚染)

処分場から飛散した灰は、パターン1、パターン2で見たように多くのの場合は谷風に合流します。ではこの谷に乗った気流はその後どうなるのでしょう。
ここでは谷風と合流した灰が近くの山々まで行きまた山風などに乗って地元に戻ってくるものと、広く関東甲信地域に拡散し、あるいは循環するものがあることをお分かりいただきたいと思います。

まず近くの山々との循環についてみてみます。気圧配置の影響によって吹く上空の一般風が弱いとき、谷風の上にはそれに逆らう風が吹きます。この反対向きの流れを補償流といいます。風呂の中に手を入れて水平に押し出すと上と下に反対の向きの流れができます。空気も流れを作るので同じです。谷風が高い尾根や山で、反対側から登ってきた谷風とぶつかると尾根や山の上で収束してこの補償流に乗って戻ってくるものがあります。また谷風から山風に変わるときに、多摩川や平井川に戻るような地域にあるものは山風に乗って戻ってきます。これらは灰がどの時期の谷風に乗ったか、谷風の速さ、山風の始まる時期などによって決まりますが、山や谷が複雑に入り組んでいるので具体的なことはほとんど分かりません。ただ分かることは次にお話します、平井川水系の水質のダイオキシン汚染がひどいということです。水に溶けにくいダイオキシンが検出されることは、絶えずダイオキシンが供給されていることを意味します。この場合山風は濃縮されているので危険です。さらにあるものは山風に乗り下流域まで流れて、日中の都心の海風に乗って戻ってくるものもあります。このように灰は山谷風だけでなく陸海風を巻き込んで循環しますが、毎日処分場から灰が出て行くのでその分どこかで吸収されているとこがない限りどんどん濃くなっていきます。

谷風に乗り谷を上る灰はやがて高い山で谷風の上を吹く補償流や谷風と入れ替わる山風に乗って戻ってくる

谷風に乗り谷を上る灰はやがて高い山で谷風の上を吹く補償流や谷風と入れ替わる山風に乗って戻ってくる
さてつぎはもっと広域に循環する場合を見てみます。
谷風の流れが強かったり、早いときはかなり遠くまで谷風が流れることがさまざまな調査で明らかにされています。このように広域に谷風が流れるときはその到達方向は、その上の一般流の風向によって決まります。それが南東の場合は碓氷峠を超えて長野、上田に、南よりでは日光、東よりでは大月方面に行きます。下の図は関東甲信地方の杉の枯損を調べた図です。東京、埼玉、群馬と連なって碓氷峠に達し少し飛んで上田、長野におよんでいます。大きな黒丸は私たちが二ツ塚処分場から飛ばした風船が流れ着いた場所です。またこの杉の汚染域と下図の東海大海洋研究所のオキシダントや微粒子の到達域もかなりの一致が見られます。これらから処分場周辺の谷風がこれらの広域の山谷風と広域陸海風の循環に合流していることが分かります。このように多摩の処分場の焼却灰の飛散はかなり広域な汚染問題に発展していたことが分かりました。日本に内陸型処分場だけで3,443ヶ所(1996年現在内閣発表)あることを考えれば、二ツ塚処分場周辺の住民も他の地域の処分場の焼却灰にもかなり汚染されていたことになります。私たちは地域の処分場の汚染の調査をする中で地域の汚染の問題が明らかになりましたが、同時に日本列島全体の問題であることにも気づかされました。(参考文献荒川正一著「局地風のいろいろ」)

関東甲信地方におけるスギ大径木の枯損状況(梨本他、1990年)

関東甲信地方におけるスギ大径木の枯損状況(梨本他、1990年)

東京から発した高濃度汚染が光化学反応しながら北へ運ばれ、碓氷峠を超えて上田長野へ達する

東京から発した高濃度汚染が光化学反応しながら北へ運ばれ、碓氷峠を超えて上田長野へ達する

風船実験で風船落下地点図

風船実験で風船落下地点図

監視局実況データ 実況値の地図表示(ポイント別分布)そら豆君(環境庁インターネット情報より2000年10月14日17時)

監視局実況データ 実況値の地図表示(ポイント別分布) そら豆君(環境庁インターネット情報より2000年10月14日17時)

パターン4.河川の汚染

その1.夜間の下降流による汚染

日中山の斜面や谷筋を風と一緒に上った焼却灰は、日没後山が急に冷えると斜面や谷すじを冷たい空気とともに谷底に下ります。多摩川や平井川の谷筋は傾斜がなだらかなために冷たい空気は谷筋にたまります。冷たい空気は谷すじで押し上げられながら川の上に積み上ります。
この時温かい水面上に冷たい空気が接するために水面が急に蒸発してできる霧(これを蒸気霧あるいは蒸発霧という)や冷たい空気が水面の暖かい湿った空気と混じってできる霧(これを混合霧という)が発生します。
このように一般に山頂で放射冷却によって生じた重い空気が、谷に流れ下りてたまり、水蒸気が凝結してできた霧を谷霧といいます。

混合霧発生

谷に下りてくる冷たい空気には焼却灰が高濃度に含まれているので、これらが核になって霧を発生しやすくします。これらの霧や冷たい空気はゆっくりと下流を下りながら、水面と接触し川が焼却灰で汚染されます。

霧による汚染:飛散した焼却灰は霧と共に

 霧による汚染:飛散した焼却灰は霧と共に

その2.雨による汚染

雨は温められた空気が上空まで昇り、そこで冷やされて水滴になり落ちてきます。このとき上空で水滴になるためには核になる細かい粒子が必要です。地上や海から巻き上げられた埃や塩の粒(地上の汚染物質や海塩粒子など)、ジェット機が出す排ガスなどがこの核になります。上空に舞い上がった灰も雨の核になって地上に降りてきます。空気中に飛散していたり樹木の葉の上で休んでいる灰は他の汚染粒子と一緒にこの雨によってきれいに洗い流されてます。(大気汚染の研究者はこのように空気中に浮かんでいる微粒子が雨滴に取り込まれることをウォッシュアウトと呼び、核として取り込まれることをレインアウト呼んで酸性雨などの発生機構の一部の過程として考えています。)

高く舞い上がった焼却灰は雨の核となって

高く舞い上がった焼却灰は雨の核となって

空中を漂う焼却灰は雨に取り込まれて

空中を漂う焼却灰は雨に取り込まれて
さてこの雨は地上に降りるとどうなるでしょうか。そうです!「水は低きに流れる」原則で山や谷の低いところ流れやすいところを通り川に向かいます。はて!このことはどこかで同じことがおっこていなかったかな!そうだよね!日が沈んで山が冷たくなったとき山から下りてくる冷たい空気、灰がいっぱい押し込められている奴も同じ道をとおっていたんだっけ。私たちはドライアイスを冷たい空気に見たてて処分場の模型の上におき、それが山を降りてくるさまを実際に見てみました。炭酸ガスの冷たく重い流れはさながら水が流れ降りるのと同じ様子でした。道に出会うと道に沿って流れ低いとこ低いとこを選んで最後は川に流れ込みました。雨はこのように冷たい空気の閉じ込められた焼却灰の通ったと同じところを通って流れ、道々に引っかかった焼却灰を洗うようにして川に流れ込みます。結局空気中に浮遊している灰も葉の上で休んでいる灰も道端でうろついている灰もみんな引き連れて川に流れ込みます。下の図は川を汚染した焼却灰のデータです。

1998年6月8日、9日に日出町がダイオキシンの調査をして町民を安心させてくれようとしたデータですが、残念ながら河川の水の中のダイオキシン濃度は都内の河川の中で一等賞に輝いてしまいました。町が発表した広報には水深が浅いかほとんどないからという言い訳が結果のまとめというところに書いてありました。6月8日、9日といえばいよいよ梅雨本番にさしかかろうとしている時期です。百歩引いて浅いとしても繰り返し雨に洗われているわけですからねえ!それ以来日の出町はダイオキシン調査をしていますがなぜか河川の水質調査だけはされていません。摂南大学の宮田先生は日の出の処分場の差し止めを求める裁判の証言で、一般的に「きれいな川」は、0.0の後に数字がくるということをいわれました。

日出町の河川水中のダイオキシン類濃度マップ

日出町の河川水中のダイオキシン類濃度マップ

環境庁のダイオキシン類の調査結果(1999年9月25日中国新聞より)

環境庁のダイオキシン類の調査結果(1999年9月25日中国新聞より)
データを見ていただきますとお分かりですが、日の出の河川は平均で1.28pgTEQ/リットル、1位に輝いた2.2pgTEQ/リットルは平井川と沢が合流している場所でその沢の上流にはたった3件の家しかありませんでした。ちなみに今回のデータを見る限り、汚染が高いところは沢が川に合流している、およそ汚染とは無関係に思われる場所が目立ちました。昼間処分場から飛び出した焼却灰が暖かい空気に乗って広域に拡散して汚染が薄まると喜んではいられないことになりました。残念ながら天に唾をするがごとくになっているようです。全国の河川の水質データを載せておきました。

全国水質ダイオキシン類測定例
都道府県 調査地点
(環境基準点)
ダイオキシン類検出濃度
pg-TEQ/L
北海道 石狩川河口 0.094
宮城県 石巻湾 0.028
千葉県 東京湾(9) 0.180
神奈川県 東京湾(12) 0.014
新潟県 信濃川(平成大橋) 3.900
静岡県 駿河湾(田子の浦沖) 0.014
愛知県 名古屋港(名古屋(乙)N-4) 0.009
兵庫県 大阪湾(大阪湾(2)西宮沖2) 0.007
広島県 広島湾(広島湾32-14) 0.009
愛媛県 伊予三島川之江海域(St-3) 0.100
福岡県 洞海湾(D-2(湾口部)) 0.005
熊本県 有明海(St-5) 0.048
ダイオキシン類検出濃度
最大値 3.900
最小値 0.005
平均値 0.370
中央値 0.021

信濃川の3.3pgTEQ/リットルを除けば全国的にもほかの河川にかなり水をあけているのがお分かりだと思います。東京都の河川のデータも載せておきました。

1999年度東京都河川・内湾ダイオキシン類調査地点図

 1999年度東京都河川・内湾ダイオキシン類調査地点図
さてこのように考えると、実はかなり昔の話ですが,日の出町でカドミウム汚染米の騒ぎがありました。セメント会社からの粉塵が汚染源ということになりました。日本環境学会の本間慎先生が1974年に表土を調べられたデータがあります。

表層土と下層土のCd濃度差分布(本間慎1974年)

 表層土と下層土のCd濃度差分布(本間慎1974年)
これもセメントの粉じんが空気中に飛散したと考えられていました。汚染された水田を作っている場所はセメント工場から数キロメーター離れた下流で山が終わり開けた平地です。近辺の土壌は比較的汚染の程度が低いので,空気だけで水田が汚染されたとは考えにくいような場所です。
しかし上流の山間部にはかなり汚染の程度が高い場所があることを考えると、ここでも先ほどの空気の汚染が雨による河川の汚染に結びつくことと無関係とはいえないように思われます。ここでダイオキシンが水に溶けにくい物質であることを思い起こしてください。絶えず流れつづけている河川のダイオキシンの水質データが高いということは、絶えず汚染原因物質が水に供給されているということになります。
「汚染のパターン3」で汚染の循環の話をしましたが、日々処分場から飛び出している焼却灰は川の水を汚染しつづけているということになります。これまで、日の出町の水道は落合という処分場の上流の表流水を取水しているので大丈夫と考えていましたが、上流地域の河川の汚染を考えるとはたして楽観できるといいきれるでしょうか!
そして平井川や多摩川の下流で取水している地域住民も、このこととまったく無関係のことではないと思います。多摩川に住む鯉にメスが多かったり、川底の泥にダイオキシンが多いこと(東京理科大、薬学部 環境化学Vol.4No.2[1994])、東京湾の水質のダイオキシンの値が高いこととまんざら無関係とはいい難いものがあります。しかし何よりも恐ろしいのは、河川の水が汚染される原因が空気による汚染であることです。そして日の出町に先に造られた谷戸沢処分場の直下に地域にガンで亡くなられた方が全国の4倍を超えてしまったことや日の出町全体でもガンで亡くなる方が増え続け、年齢構成を調整したデータでも全国平均をついに追い越してしまいました。また男子の出生率の低下傾向も気になるところです。

パターン5.二ツ塚処分場に近接する局地風

処分場の周辺の風の流れ

一年間に渡る月一度の処分場周辺の定点気象観測を終えてデータを集計してみました。まず地点ごとに特徴が見られましたので、それから予測される汚染の問題を見てみたいと思います。次に処分場周辺全体に関すること特に処分場の建設工事、埋め立てによる地形の変化などによりこれから予測できることなどについて考えて見たいと思います。
処分場周辺での風は

  1. 地形と周囲の木の高さ、密生度(粗度)による流体力学に従う流れ
  2. 日射の変化による熱力学的な流れ

が合わさっていると考えられます。一般風が弱い場合は[2]の影響が強く、その逆は[1]の影響が強く表れると考えれます。一般風を予測するためにアメダスのデータや防災無線文章作成中
観測点は自動観測機によるものは、地上から約4mの高さで、目視によるものは約1mであった。10地点中1地点除き全てが尾根道に沿って設置された。したがって目視によるデータは、周囲の木の高さ、密生度によって道を流れる風の影響が窺われた。
地点ごとの特徴を見てみましょう。

二ツ塚処分場周辺の風の流れ(2000年4月8日)

二ツ塚処分場周辺の風の流れ(2000年4月8日)

T地点:この地点は処分場のダムの直下になります。

処分場が建設される以前は谷古入り沢の出口にあたり、沢沿いを歩いていると心地よい風が吹き降ろしてきて、雉のつがいが人見知りもせずに遊んでいる光景によく出会いました。水も風もここを通っていました。
この地の採石場のご厚意によりここに常時観測器を置かせていただきました。観測機はちょうど沢筋の上10メートルほどのところに取り付けられています。
ここでの沢は北北東―南南西を向いています。沢をしばらく下ると玉の内川に合流して北北西に進路を変え平井川に合流します。処分場から日の出、秋川地域への風の吹き出し口にあたります。
逆転層のシミュレーションも採石場内をお借りして行いましたが、見事に重い煙がこの沢筋を通り平井川に抜けていくのを観察しました。

風の特徴

年間を通して一般風の影響を受けますが、風向きは沢筋に沿って流れようとしますので、防災無線(一般風)のデータの北-南から北東―南西方向に傾きます。(風配図参照)

汚染の恐れ

パターン2の所のグラフで処分場操業時間帯の一般風を見てください。そこの平井川方面がここを通り抜けていく風になります。ただしこのグラフは日中の処分場が操業中に舞い上がった灰がそのまま流れる場合です。それ以外に夜間、朝方の逆転層のときに汚染が濃縮された冷たい空気が流れることは、シミュレーションでも見たところですが、風の弱い、すなわち一般風の弱い夜間は、局地風の山風が吹きます。したがって夜間は下流に吹く風が多くなっています。下の図は季節を代表する月単位の風配図(風がながれる方向を示しています)です。防災無線の一般風と比較してみて下さい。

MW地点:この地点は処分場の西奥を上り詰めた尾根道です。

処分場ができる前は、日の出側の坂本の神社から山道を20分ほど上り詰め、緩やかな下りの尾根道を降りたところに急に明るくなって東西に開けた馬の背のようなとこに出ます。東の谷から上がる涼風をひと汗かいた背中に受け、西に広がる奥秩父の山々を遠く眺めれば、常緑の山の三つ葉を晩の食卓を浮かべつつ摘み取るのもよいでしょう。眼下には北大久野川の沢筋が見下ろせます。

風の特徴

年間を通してかたくなに外に(西方向に)流れました。観測は日の出から、はじまりますが、朝方は微風程度で吹き流しでは捕らえられましたが計測器が動かないときがありました。午前10時ぐらいからかなり吹き出すことが時々ありました。一般風が弱いときは南斜面に日が当たり処分場の気流が動き出し西側で一番低いここから気流があふれ出るような流れでしょうか。一般風は南―北を中心に吹きますが、南よりの場合はT地点の沢の入り口から入り奥まで来てやはり一番低いここをとおって出ていくようです。北よりの場合も北斜面に吹き降ろされた風はここを通ります。日没後から夜明け前は観測していないので分かりませんが、処分場の操業中はほとんど外に向かうと予想できます。

汚染の恐れ

処分場の西側に1km程行くと北大久野川の流れる沢があります。さらに西に1km程行くと平井川上流の沢筋に出合います。風はそこに向かって流れるので沢筋の風に合流するとこの地域の汚染が心配です。パターン4.河川の汚染の地図を見てください。かなりの高濃度の汚染が発表されています。この水質調査をする4ヶ月前に二ツ塚処分場は灰の埋め立てを開始したばかりです。しかしパターン4.河川の汚染でも見ましたようにダイオキシンの水質濃度は、ダイオキシンが水に溶けにくいことから蓄積して高くなるものではありません。水に溶けずに絶えず流れている川の水は、極端な話日々汚染された汚染度を示しているといっても過言ではないといえるでしょう。

G地点:MW地点から尾根道と分れて細尾根道を北に巻きながら3分ほど上るとなだらかな尾根道になります。

ここも小さいながら馬の背のようになっているところですが切り立った絶壁のようなとこです。処分場の北西を向いた斜面で正面右に馬引沢峠が位置します。

風の特徴

ここもほとんどの観測で南西、南南西方向に風が処分場から吹き出していました。やはり風が追い込まれてここもその吹き出し口になているようです。

汚染の恐れ

この地点から南西、南南西方向は山を1つ超えて集落を通り平井川に向かいますそこには町の取水場があります。2000年8月3日の日の出町のダイオキシン調査があり、この地点から南南西700メートルの神社付近の山林の土壌から51pgTEQ/g検出されたと発表されました。結論の欄には環境基準1000pgTEQ/gを大幅に下回ったので問題ないことが確認できた旨と書かれていた。ちなみにこの値は、これまで処分場を操業管理している処分組合、日の出町が調査をした中で最も高い値でした。

D地点:処分場の南東を向いた斜面でG地点の対岸になります。

処分場の南側を向いた斜面の周りの尾根道で唯一処分場が見渡せるとこです。それだけに風当たりも強く気になるとこです。

風の特徴

北西、北北西、西北西に吹き出す傾向があります。西北西は尾根道に沿います。時として乱れた吹き方をましますが南南東、南南西に吹く場合もありました。南東を向いているので日射の影響をよく受け斜面を登る斜面上昇流が観測できたと思います。上昇流がまっすぐであれば北西の吹き出しになり、左巻き気味になれば西北西に吹き出すことになります。

汚染の恐れ

西北西方面の沢に集落があり、それを超えて吉野街道を経て多摩川に出合います。

A地点:処分場の比較的緩い南斜面を作っている上にある尾根道です。

埋め立地の東端に当たります。正面は管理塔を挟んで埋め立て現場でした。管理等の裏側に建物に挟まれたような位置に何と気象観測機がすえつけられているのを気象庁の専門家の方が見て驚かれていました。この斜面の植物は処分場に近づくほどいろいろなダメージを受けているものが見られました。

風の特徴

こちら側の尾根道ではかなり高いほうです。そのせいか防災無線(一般風)の影響をかなり受けているのはT地点とよく似ています。しかし処分場までは杉の植林がされていているためか処分場からの風が少ないように思えました。しかしあとでも説明しますが、杉が伐採されてから南斜面に吹いてくる風がかなり強くなりました。

汚染の恐れ

杉の伐採により多摩川方面の風の流れが強くなってきました。今までより汚染が多く多摩川方面に流れる恐れがあります。

処分場周辺全体に関すること特に処分場の建設工事、埋め立てによる地形の変化などによりこれから予測できること

処分場周辺での観察の目的の一つに斜面上昇流の観測がありました。私たちがはっきりと観測できたのはME地点で吹き流しを何ヶ所もつけたつり竿を処分場の斜面に水平に伸ばしたときでした。ME地点の尾根道は斜面にありました。処分場の地形は東西に伸びているために日射を受ける時間が長く上昇流はかなり多く発生していたと思いました。そして周辺を取り巻く尾根は起伏に富んでいたのでそこから飛び出す風が観察できたと思います。実際には一般流も処分場の中に同時に入ってくるので風の動きが必ずしも予測した通りではなかったかと思いました。観測が終わってから南斜面の工事が盛んに行われ、枝尾根が削り取られ、杉の植林が次々と伐採され見られる姿が消え果てしまいました。尾根道を歩くとまるで床屋に行った直後のように風の通りがよくなってしまいました。植林が伐採された後南斜面にはこれまでとは考えられないほどの日射が注がれ、斜面上昇流が活発に吹き上げきています。多摩川方面にはこれまで以上の汚染が心配になります。

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