『トリチウム汚染水海洋排出の危険性』渡辺敦雄【市民環境問題講演会】 2021.3.6

先日3月6日(土)に東芝の技術者として福島の原発の建設の責任者でもあった工学博士の渡辺敦雄さんを講師に迎え、市民環境問題講演会「トリチウム汚染水海洋排出の危険性」(日の出の森・支える会、たまあじさいの会 協賛;日の出の森・水・命の会)が開催されました。今回は初めてのオンライン開催となりました。

渡辺敦雄先生、東電株主代表訴訟で証人尋問後の記者会見写真: 東電の株主が元の取締役に対して、事故の責任、経営者責任、債務破綻の危機を問い、東電に約20兆円の損害賠償責任を求めるものです。渡辺先生は技術面の証人として出廷されました。

この開催の皆様への呼びかけと、準備のことや当日の講演会の次第については、たまあじさいの会の濱田さんが、既にまとめておられますので、ここに引用させて頂きます。
『初めてということもあり、調布の籠谷さん、八王子ハカルワカルの二宮さんに、支える会の山本さんには練習日から参加していただき大変お世話になりました。開会は会場から支える会の瀬戸代表の挨拶から開演しました。瀬戸先生からは、1月に亡くなられた横井久美子さん(元副代表)への追悼の言葉とともに、会場とzoom参加者が一緒に黙祷を捧げてから始まりました。渡辺先生の講演は、パワーポイントの資料を使って1時間20分ほど行われ、その後30分ほど質疑応答が活発になされました。(参加できなかった方のために講演内容は籠谷さんのZOOM録画を送ってもらいます)会場の参加者10人(運営委員含め)
オンライン参加者25人(ホスト含め)会場とオンラインの重複を相殺すると、ZOOM効果で参加者は32人でした。閉会はたまあじさいの会共同代表古澤さんのオンライン挨拶で無事終わりました。以上皆様有難うございました。濱田光一』

今回の講演会は、渡辺先生が用意されたパワーポイントに従って、熱く力強い口調で語りかけられました。このパワーポイントも、講演も質疑応答も含め、終始ZOOMの録画があります。ご希望の方には転送出来ますのでお知らせください。

なぜ原発の設計者だった人が、脱原発に転じられたのか?
原発に対する疑問は、1979年のThree Mile 島の炉心溶融の惨事が契機だったということです。そして東芝社内では1991年に原発の担当部署を自らの希望で外れられた。原発は事故を起こすと、その規模や質からも世界の終わりともなりかねない。人類はこの原子力を到底コントロール出来ないということ。たとえ出来るとしたって、世界の終焉をもたらすような、恐ろしく危険極まりないものは扱うべきものではないからです。そして、自分が手掛けた仕事が、天災だろうと人災だろうと、結果として破局の災害をもたらしてしまった。反省の仕方には、ひたすら内面に向かう静かな消極的なものと、もう二度と同じ過ちを繰り返さないために、自身の専門知識と経験を活かし、積極的に責任を果たすという方法もある。無論、後者を取られたわけです。反原発に技術者の良心で取り組まれている。日本の現実はというと、原発の発電量は全体の1%ちょっとの僅か二百万キロのみ。それなのに原発の再稼働を当局はなぜ急ぐのか。かたやドイツは2022年に22基あった原発の全廃が確定しているというのに、、、

今回のテーマであるトリチウム水の処理について
トリチウムという放射性物質はβ線なので、もし人体に取り込まれたら内部被ばくを起こす危険なもの。それを海洋に放出したら、光合成により『有機結合型トリチウム』となり、海洋植物に取り込まれ、食物連鎖、生物濃縮による危険性。漁業だけでなく、何れは人間に還ってくる。原発の安全性というものは、住民が被ばくしないことなのである。だから結論としては、暫くの間(少なくとも50年間)は地上に保管するしかないことを導かれた。幸い現在の汚染水の発生はピークの五分の一程度の日量100トンに減っていて、さらに減る傾向にあるので(最新技術と鳴り物入りで導入された凍土壁はほとんど寄与してないと)、先生の意見では福島第二(2F)にタンクを設置して保管するのが、安全性からも、技術面からも目下最善の解決策であり、海洋放出はあってはならないとのこと。とても判りやすい結論でした。

技術・経済的見地よりも倫理で(算盤より論語)
来年にも原発を全廃するドイツと、これだけの重大事故の当事者で被害者なのに責任追及も反省もないまま、懲りずに再稼働を増やしてゆく日本との違いは何なのか?にも言及されました。それは、日本は技術・経済の観点で議論しているが、ドイツでは哲学・倫理で議論している。未来を背負う子供たち、後世に何を残すか。それ以上に大切なことがあるだろうか。どちらが正しいか。誰にも判る簡単な命題です。

参考として東電株主訴訟、第57回口頭弁論証人尋問後の記者会見
オンラインの参加者との質疑応答もていねいに時間を掛けて行われました(内容は割愛させて頂きます)。渡辺先生も証人として出廷された東電株主訴訟、第57回口頭弁論証人尋問後の記者会見を見ることが出来ます。https://www.youtube.com/watch?v=3Vx5kEsdtqg
この東電株主代表訴訟は、東電の株主が元の取締役に対して、事故の責任、経営者責任、債務超過、債務不履行、破綻の危機を問い、東京電力株式会社に対しての約20兆円の損害賠償責任を求めるものです。渡辺先生は東電の嘘を、技術面から暴く証人で、そこには事業者が絶対に負うべき安全の文化、Saftey Culture の欠如と、CS(顧客満足)思想の貧困を指摘されています。これでは経営者責任を免れることは出来ません。この記者会見では、同僚の技術者が、技術屋の自負と誇りから、次のような発言をされていました。『津波や地震や自然の減少に対しては、人間の制御は効かない。(それにより事故が)起きるのは仕方がない。責められない。しかし原子力発電所は固有の特性を持っている。(これは)地震や津波で影響を受けて良いものではない。地震や津波の影響を克服できないのであれば、原子力発電所は止めるしかない』

当たり前のことが何故できないのか?
結局、人類は貪欲で強欲でバカな生き物だから?でも、少なくとも原発の問題ではドイツは正しい道を歩んでいる。ならば、言いたくはないけど、これは天に唾するようなものだけど、日本人が問われなければいけない、猛省しなければいけない問題です。ドイツは対岸の火事を見て、火の用心を徹底することに決めた。火災を出した張本人は、喉元も過ぎてないのに、熱さを忘れている。中には焼け太りしている連中も居て、それをみて羨ましい、オレもあやかりたいなんてな狂騒曲。そのためには出火元の親分の批判や責任追及したらまずいよ。復興の仕事から干されてしまう。いいじゃないの、今が仕合せならば。みんなで渡れば怖くない。空気を読めなきゃ、忖度できなきゃ、大人ではないよ、と外れたら天然だと顰蹙を買う。これは子供には見せられません。(だからか子供数も少ないのかも)火元のお国の親分たちは、この国を放射能と疑惑だらけの真っ黒な国にしていて、そしてそうゆう方たちほど『美しい国、ニッポン』と言うのですね。やっぱ問題は哲学、倫理の意識の欠如なんすかね。
以上、文責 古澤

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